2019年12月13日金曜日

詩の旅日記③(北海道後編)

前回 
http://shijinrui.blogspot.com/2019/12/blog-post_11.html 
からのつづきです~ 



いよいよこの詩の旅日記も 
北海道編ラストとなりました 

それでは今日も 
長いけどお読みくだされ~ 




* 



10/26(土)パート2 
【ただ命がけで詩を詠む夜】 

法城寺でのライヴを終えてふたたび札幌へ~ 
帰り道にむかわ町で週末だけ営業していて大人気の、道産小麦100%使用の無添加生地の超おいしい、ハルちゃんオススメ「まくまくぱん」をゲット。車中で腹ごしらえして、三日目となる俊カフェに到着。 
昨夜パフォーマンスをしたはずなのに、法城寺でのライヴが濃厚であったが故ずいぶん久しぶりに帰って来たような錯覚をしてしまう。だが、ここからさらに、ディープな世界へ突入することに!
札幌では朗読家による詩の朗読会は行われているが、詩人による朗読会がほとんど行われていないと聞いて、ならばと企画した今夜の「ただ命がけで詩を詠む夜」 
出演は、URAOCB、向坂くじら、大江那果、オイラのむかわ町からの一行に加え、三角みづ紀さんと、レンコンズという、詩人、及び、詩的アーティスト六組。 
まずはレンコンズからスタート。男前な女子2人組によるコントユニット。昨年の「俊読オープンマイク」で見て、なんだか心に刺さって忘れられなくなったレンコンズ・ワールド。ヘタな詩人よりも、うんと詩を感じさせてくれる。きっと頭がおかしいんだとおもう(褒め言葉)。もっとおかしくなればいいとおもう。 
二番手・昼間に詩の朗読デビューを生まれ故郷で飾ったばかりで、早くも2ステージ目を迎えることとなった大江那果。つづく三番手・同じく昼間にすごい放出量のグレートアクトをカマしたばかりのURAOCB。この二人が、1ステージ目から、俊カフェでのパフォーマンスへ、しっかりと在り方をアジャストしてきてくれたことが、この詩を詠む夜が成功に繋がった大きな要因のひとつだとおもいます。大江くんもURAさんも、この日は空間察知力が冴え渡っていて、ドンピシャな詩の息を放ってくれました。 
四番手・前半トリとなる向坂くじら。ギターリストの熊谷勇哉くんとのユニット「Anti-Trench」をはじめ、でんちゅう組や、オイラやURAさんとやっている「4272」での活動など、この三年ほどポエトリーシーンと呼ばれる界隈で大活躍中の彼女。ただ、その一見華やかに見える活動とはまた別のところでも、彼女は詩人として存在しているのだとおもいます。だからこそ輝いている、と申しましょうか。 
夏頃から何度か、表現について、詩について、くじらちゃんと話し合う機会がありました。表現をしていれば常に壁にぶち当たります。そこでやめていく人も多いし、傷ついたふりや、乗りこえたふりをしてごまかして、中途半端な表現をしつづける人もいます。それをヨシとしない”向坂くじら”という詩人がオイラは大好きです。この夜、彼女はヒリヒリと、ただ、詩を詠んだ。より苦しいことが待っているかも知れない方角へ向かって、それでも笑って、いましか出せない呼吸で。 
自分の話をすれば、どんなによい詩が書けても、パフォーマンスができても、もう打ち上ることはできないし、完全にぐっすり眠ることはできません。詩を生きれば、圧倒的に帰る場所はなくなる。それでも、足元にはいつも、詩を決意する前には得られなかった、謎だらけのあやふやなこの生の、かすかな道筋が見える。見えたところから、どんどん書いて、どんどん声に乗せて、どんどん伝える。そして伝わってくれた側からの空気を受け取って、また一歩一歩踏み出して行く。一人で大事に抱きしめることはできない。そんなことしたら腐ってしまうから。詩は受けとめることと、与えることでしか、成り立たない。恐怖を感じつづけるのが本能の宿命ならば、その恐いということを直視して、愛せる要素をすこしでも見出して、愛して、真理を悟っていく。行けるところまで、なんて言ってないで、ただ、行く。 
休憩明け。五番手・三角みづ紀。そんなオイラのよくわからないこの感覚を、オイラとはまたちがった形で、具現化してくれていると勝手に信じている詩人。いろんなことに疲れたり、投げ出したくなったり、絶望したりしたとき、「この世界にはまだ”三角みづ紀”という詩人がいる」という事実が、どれほど己を救ってくれてきたことか。 
ここ数年ループマシーンを使用して、声を重ね合わせるパフォーマンスに磨きをかけてきた三角さん。それはほんとうに素晴しい成果を上げているのだけど、その彼女が久しぶりに今夜はノーマイクで、己の地声のみで放った呼吸は、ただ、ただ、命がけで、詩で、それだけでしかなくて、すべてで、ひとつ、でした。 
鹿児島で生まれ、東京で世に出て、そこから世界中を駆け回って”詩”つづけてきた三角さんが、札幌に移り住んだのは二年ほど前のこと。はっきりと何がとはまだ言えませんが、彼女のなかの何かがたしかに、この札幌だからこそ変わりはじめているのだという部分を感じました。新旧作(前夜に書いたという最新作も披露)を織り交ぜながら、静かに、激しく、観客の一人ひとりに大切に手渡しされていくような贅沢なステージは、それぞれの生命がより遠くまでひびくための、より小さな声を、三角さんが今まさに生みだしている瞬間でした。ありがとう 
こんな素晴しい出演陣のあとに僭越ですが、トリはワタクシメが務めさせていただきました。前々回の日記で書いた、真夜中に大江くんの前で稽古した「ピキピキ夏山のドンバラ大放送♡(濃縮ヴァージョン)」の根多おろし。今年の9月に、文学作品をひとり芝居として上演する活動をしている俳優の立本夏山さんの依頼で書いた長編詩を新たに組み直した今夜のパフォーマンス。自分以外の誰かが演じることを前提に好き勝手に書いた作品を、結局自分でやってしまうという、どうだい、このドMっぷり(笑)。そんな面倒くさいことしなくていいのに敢えてやったのは、9月の本番での夏山さんが素晴しすぎたのと、この日の共演者と札幌のお客さんとのありがたい因縁を考えたことと、ここが俊カフェだったから。 
とにかく余裕なんかなくて死に物狂いで駆け抜けたから、あんまり細かいことは覚えてませんが、終わったら上半身裸になっていて、身体の芯がズキズキ熱くて、俊カフェ店主・古川さんが満面の笑みで立っていました。昼間も通常営業した上で、連夜のイベントをいっしょにつくってくれた古川さん。絶対に疲労は溜まっているはずなのに、なぜだか日増しに元気になっているよな…さすが、俊太郎さんも恐れる、ほんものの詩好き。気がつけばいつもこの人のおかげで、オイラは己の能力以上のものを引出してもらっている気がします。 
そんなこんなで、ただ命がけで詩を詠み合い、受けとめ合った夜はおしらき☆ちなみにこのイベントは、詩の言葉、声、息を、お客さんに存分に味わってもらいたかったので、オイラは極力MC部分を削ぎ落す形で進行したのですが、エンディングで我慢していたおしゃべりモードが大爆発しちゃいました!三角さんが「来年新しい詩集が出ます」と挨拶されたのをきっかけに、そこからお客さん・スタッフ・出演全員で、「三角みづ紀新詩集タイトル決め大喜利」へ突入~。さっきまでの壮絶なひとときが嘘のような、それでいてどこかで繋がっているような、おバカな笑い声がどこまでもひびきわたりましたとさ、めでたし、めでたし!? 



10/27(日) 
【俊読オープンマイク 2019】 

「桑原滝弥の俊カフェ4DAYS + むかわ町」もついに千秋楽。 
最後はやっぱり、俊カフェと古川さんと札幌のお客さんと出会うきっかけとなった”俊読”を。 
日本でもっとも愛されている詩人・谷川俊太郎の作品を、さまざまな人が自由に、自分の解釈・やり方で表現していいイベント。通常の俊読では、最後に作者である俊太郎さんご本人にも登場していただいております。今日はオープンマイクということで、俊太郎さんは会場にはいらっしゃらないけど、あとで映像で観てもらうことになっています。 
とは言え、ご本人がその場にいるよりは、やる方は緊張しないで伸び伸びできるはず。昨年俊カフェでこの「俊読オープンマイク」をやって、参加してくださった人のなかから数名に、今年5月の「俊読 2019」で俊太郎さんと共演してもらいましたが、かなり緊張していた人が多かったもんなあ。人によってはオープンマイクのときの方が、俊太郎さんの言葉がイキイキ躍動していた部分があったよなあ、なんて感じて、この日の開催へと至ったわけです。 
俊太郎作品のなかでも、わりとメジャーなものから、すごい掘出し物的なマニアックなもの、あとがきや、小説作品まで飛び出して、しかもその表現の仕方が、朗読だったり、ひとり芝居風だったり、曲を付けて歌ったり、音源を使用したり、複数名で声を重ね合わせたり、実にさまざま。そして、そのどれもが、俊太郎さんという孤独から解き放たれて、息づいていった言葉であるという、この真実よ。 
「ああ、この人にはこんなふうに、俊太郎さんの言葉がひびいていたのか。自分のイメージとはまったく違うけど、なんかこれもいいなあ」なんて新鮮な驚きの連続。そして、それはまた、この日この場この人々の集まりだったからこそ生まれたもの。もし、このブログを読んでいて興味を持ってくれた人がいたなら、あなたの日々のなかで、俊読を、詩を声に出して詠むということを、ぜひやってみてください。気のおけない誰かの前でも、ひとりぼっちでもかまいません。きっと素敵な発見が、自分自身との新たな出会いが、待っているはずです。 
ゲストとして、前日から3ステージ目となるURAさんとくじらちゃんが、素敵なアクセントとなるパフォーマンスを繰り広げてくれて、最後のエントリー参加者であるくらげふぁくとりーのお二人、そしてオイラのパフォーマンス(古川さんの無茶ぶりでアンコール付き)まで、みんなで感じ合って、紡ぎ合った、今年のオープンマイク。去年とはまた異なる趣の、豊かな一日となりました。俊読はこれからも、シチュエーションやタイミングを考えながら、まだまだつづけて行きますので、どうかよろしくお願いいたします。 
4DAYSラストにオイラが「来年は5DAYSやって、毎年一日づつ増やして、いつか俊カフェを滝カフェにしてやる!」と冗談で言ったら、カウンターからひょっこり顔を出した古川さんが「言いましたね!」と本気の目を輝かせて返してくれたことは、ビビったけど、やっぱりうれしかったので、来年もまた、ここで、いっしょに詩つくらせてもらえますように。 
あらためて、この四日間の詩の旅で関わってくれたすべての”あなた”と、遠くからおもっていてくれた”あなた”へ、御礼を申し上げます。ほんとうに、ほんとうにありがとうございました 



10/28(月) 
【追加公演???】 

北海道でのすべてのライヴ日程を終えて、今日は帰京日。 
お昼頃、オイラは新千歳空港のレストランで、同じような時間帯の別便に乗るくじらちゃんと軽食&お茶をしておりました。 
三日後に詩の共同制作の仕事でセルビアへ経つ彼女に、「海外では思わぬことがしょっちゅう起きるから油断しないで。なんでも一人でやるつもりでしっかりやるのだよ」と、エラそうに先輩面してアドバイス。くじらちゃんも素直に「はい!はい!」なんて聞いてくれるから、”なんか俺、かっこいい先輩っぽいなあ”と気を良くして、「ここは俺が出しとくから」とお会計を先に済ませて、「ゆっくりしてなね」と言い残し、ちょい先の便に乗るオイラは席を立ちました。後ろ手で彼女に手を振りながら。ああ、なんてかっこE先輩なのだ、たっきーったら。 
しかし、保安検査場へ行ってチケットを見せたら、係の人が不思議そうな顔でオイラにこう言うじゃありませんか。「このチケット、明日の便ですね」!きゃ~、やっちまった!日にちを間違えてチケットを取っちゃってた!!! 
ダサい先輩に数分で逆戻りしたオイラは、そこからなんとかくじらちゃんにバレないように顔を隠して空港を出て、札幌方面行きの電車に飛び乗ったのでした。 
おそるおそるコソコソとふたたび俊カフェに舞い戻ってきたオイラを、すごく驚きながら、爆笑して、喜んでくれた古川さんとスタッフの堀さん。ああ、ダメだ。涙でもう何も見えない。北海道は寒いけど、なんてあったかいんだ。北の大地のどこまでも大きな愛に抱かれながら、オイラのオマヌケな詩の旅はまだまだつづくのでした… 



というワケで 
次回からは宮城編に突入しますので 
どうかお楽しみに~〜〜 




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↓そしてコチラもよろしくにゃん↓ 

俊カフェで根多おろしした 
「ピキピキ夏山のドンバラ大放送♡」の 
完全ヴァージョンもお届けするよっ 



◎ご予約/もっともっと”あなた”に会いたくて受付中!!! 

桑原滝弥・東京生活ラストLIVE 
【また、あう詩まで】 

12/24(火)20:00~ 
東京・クロコダイル 


「かるがるしく詩人となのりなさい」 そう叫びつづけてきたわたしの、新たな旅立ちに向けての独り舞台。新旧作織り交ぜながら、ソロでたっぷりと二時間、”詩”つづけます… 
http://shijinrui.blogspot.com/2019/11/blog-post.html