2020年7月13日月曜日

大島健夫著書「外来生物のきもち」を読んで

これまで何度も 
いっしょに詩の仕事をしてきた 
大島健夫さんの最新刊
『外来生物のきもち』を読みました 



人間の勝手な都合により連れて来られて 
結局さらに勝手な都合で 
駆除や殺処分されていったり

ひょんなことから
見ず知らずの土地で生きていくことになった 
たくさんの”外来生物のきもち”を 

外来界のビッグネーム(?)である 
カミツキガメが 
さまざまな生物にインタビューしていく形式で 
迫って行く 
異色の一冊 



アライグマ 
シロツメクサ 
ウシガエル 
ヌートリア 
オカダンゴムシ 
セアカゴケグモ 
ワルナスビ 
ワカケホンセイインコ 
イエネコ 
アメリカザリガニ 
などなど… 

動植物問わず 
登場する生物は実に多様で 
その数38種

最近里山での
謎のプロジェクトを始動させた
オイラにとっては
とてもタイムリーな本だと言えます 



食用で輸入されたウシガエル 
そのカエルのエサとして 
さらに輸入されたのが 
アメリカザリガニだったり 

在来の生態系に深刻なダメージを与えている 
そのトップランナーが 
かつては中東から北アメリカの砂漠地帯で暮らしていた 
今や世界一の人気ペットでもあるイエネコだったり 

多くの今を生きる日本人が心に描く 
「日本の田園」や「日本の里山」の風景が 
実は江戸時代後期以降にやってきた 
外来種で構成されていることだったり 



読み進めていくと 
実に興味深い 
驚くべき事実がわかってきます 

生き物や歴史に興味のある人には 
たまらなく面白いんじゃないでしょうか 

そしてその生物の運命を通して 
愚かでまったく学習しない 
”ニンゲン”という種の 
罪深さが浮き彫りになってきます 



かと言って本書は 
外来生物の対話形式で進んで行きますので 
ことさら難しかったり 
説教くさすぎることはありません 

むしろユーモアにあふれていて 
おもわず笑ってしまいます 

そして笑ったあとに 
外来生物のタフさに畏敬の念を抱いちゃったり 
人間存在の浅はかさにゾッとしたり 
自分自身に腹が立ったり 
かと思えば前向きな気持ちになったり 

なんというか 
不思議な生命促進作用がある一冊です 



このブログの読者は 
やはり詩が好きな人が多いでしょうから 
そういう観点からお伝えすると 

この本を詩として読むことももちろんできます 

まず外来生物のきもちになって考える
”私(し)”があり 

その事実から目を背けない覚悟から
”志(し)”が生まれ 

いろんな生命と呼吸を合わせることで
”死(し)”を引き寄せ

ついには祈りとなって
”詩(し)”がひびく… 

そんなよっつの”し”を感じながら 
オイラは読みました 



思い返せば 
大島さんのパフォーマンスを 
これまで共演も含めて 
何十回も見てきましたが 

そのなかでも
特に印象深かったステージのひとつに 
数年前に千葉で拝見した 
里山の生き物に関する講演会があります

そのときの大島さんは 
生き物の専門家として 
壇上に上がられていたのですが 

そこには 
まぎれもない 
詩人の大島健夫がいました 



詩は 
こちらから書いてやろうとおもっても 
書けるものではなく 

詩に 
選んでもらう 

それがすべてです 

すくなくとも自分は 
そんなふうに 
やってきました 



今回紹介した本書をはじめ 
詩として書かれていない 
あるいは詩として存在していないはずのものに 
詩を見出してみる 

そんなことを 
一人ひとりのニンゲンが行ったら 
もしかしたら 

たくさんの傷つけてきた 
この地球上の生き物に対して 
ちょっとだけ罪滅ぼしが 
できるのかも知れません 



あるゆる状況の 
あるゆる職種の 
あらゆる年齢の 
あらゆる性癖の
あらゆる運命の 
あらゆる
いまを 

生きているニンゲンである
あなたに 


読んでほしい本です 




『外来生物のきもち』大島健夫 
¥1,760- (メイツ出版) 
https://www.amazon.co.jp/%E5%A4%96%E6%9D%A5%E7%94%9F%E7%89%A9%E3%81%AE%E3%81%8D%E3%82%82%E3%81%A1-%E5%A4%A7%E5%B3%B6-%E5%81%A5%E5%A4%AB/dp/4780423368/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dchild=1&keywords=%E5%A4%A7%E5%B3%B6%E5%81%A5%E5%A4%AB&qid=1594567154&s=books&sr=1-1 




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◇今後の予定 

7/18(土)17:00~ 
イベント「蓬莱座オープンマイク1」 
http://shijinrui.blogspot.com/2020/07/blog-post.html 

7/25(土)発売 
雑誌「シェルスクリプトマガジンVol.67」 
発行・USP研究所 

8/15(土)17:00~ 
イベント「蓬莱座オープンマイク2」 
会場・山口 旧蓬莱閣 

9/19(土)17:00~ 
イベント「蓬莱座オープンマイク3」 
会場・山口 旧蓬莱閣 


※リンクなきものは近日中に詳細発表