本を乱暴に扱っていて
妻がそれを注意をした
言葉をすごい勢いで
駆使しはじめている息子は
こう言い返した
「だって本は生きてないじゃん!」
その瞬間
通りすがりの父親であるオイラは
反射的に息子にこう言っていた
「ちがう、本は生きている」
と
そんな言葉が自然に出たのも
遠藤ヒツジ詩集
「しなる川岸に沿って」を
読んでいたからかも知れない
本は眠らない
本は話さない
本は怒らない
本は笑わない
本の中は笑っている
本の中は怒っている
本の中は話している
本の中は眠っている
~収録詩「本は」より~
とにかくやさしくて
そしてきびしい本と出会った気がする
最初読んだとき
詩集に書かれている言葉が
とても遠くに感じた
それから数日置いて
もう一度読んでみたとき
その言葉たちは
急に身近なものになっていた
三度目に頁を開いたときには
それはもう
自分自身の言葉になっていた
誰かが書いたはずの
”ユテコ”や”朝鮮の雑煮”や
”大きな目”や”黒く長い人形の髪”や
”アダムズアップル”や”はぐれもの”や
”心許ない/細い契りの一声”は
たしかに
己の実感をともなった
まぎれもないわたしの
詩になっていた
わかる
わからない
の境界線を超えて
詩はいつだって
誰かと
何かの
無意識を
出会わせてくれる
やさしくて
きびしいのは
それがこの世界の
愛
そのものだから
ちなみに
息子はそれから
本をすこし大切に扱うようになってきた
思い返せば
自分も子どものころ
やはり本を乱暴に扱っていて
普段はめったに怒らない母に
きつく注意されたことがあったっけ
息子もいずれ
自分の子どもに
本について何かを伝える日が来るのだろうか
しなる川岸に沿って
何かがたしかに
流れていくように
遠藤ヒツジ詩集
『しなる川岸に沿って』
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まっすぐ歩けずに、気づけばずいぶんはぐれもの
ひびのどこかに忘れ去られた物事は、川原の小石
そんな石を、かすかに照らす言葉の光たち
無意識の流れがしなって、世界の岸に立っている
<元は一つの陸だったけれど
やがて不理解の大河がながれて
わたしたちは離された
でも大丈夫だ
橋はかかってる
水に浸かって
融けてしまう必要はない>
(詩「声と紙にかかる橋」より)
ポエトリーリーディングの世界でも現代詩の世界でも、いま注目の新鋭詩人です。
閉塞した世界に生きた言葉を発信する期待の星。
はぐれていったもの、忘れられたもの、そんな川原の小石を照らす詩の言葉。
空港と町工場と川のある町から生活感とほろ苦い青春の匂いがしてきて、それでいてアートの次元の繊細な表現が展開します。
<著者略歴>
1988年生まれ、東京都在住。
2015年より朗読活動を始め、2019年「ポエトリースラムジャパン」前橋大会で優勝。
現代詩の世界では2017年に日本詩人クラブ「新しい詩の声」優秀賞。詩誌「白亜紀」「指名手配」などに詩を発表。
現在、「ポエトリーリーディングオープンマイクSPIRIT」及び「アオサギ文化講座朗読ライヴ」を共催。日本詩人クラブ会員。
既刊詩集『橋渡り』『反照譜』。
アオサギ・刊
定価 1,500円+税
*
そんでもって明後日(8/15)は
「蓬莱座オープンマイク2」
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イベント終演後(19時頃~)は
会場である旧蓬莱閣屋上にて
小さな花火大会もやるからね☆
よかったら
命がたくさん笑う夜を
いっしょにつくりましょ~~~